Eno.66 浅岡百合子

リリィ-サバイバル

 


多分この間の嵐で流れ着いたんだろうけど
ジニティが何とかなるまでよりいいもの食べてる気がする……
魚はちゃんと魚だし


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昨日の疲労やつ、バレちゃったや

多分寝てる間に見回りしてくれてるんだよね
それはありがたいけど……
起きて、寝ている間にかいた汗や消化したぶんの飲食あさごはんをして
弱まった雨のなかでできることを探していたら、アスターさんが小屋の外、雨の当たらないところにうずくまっていて

声をかけたのがうちだとわかると、叱られた。
また無茶をした、って。そうする前に話してくれたら自分がいくから、って。

うちがやりすぎるのは、作業中。
まだ、もう一回はやれる
もっと資材を集めたい
雨の中行き来するのは大変だから、もう一回
そんな気持ちからだ。
その欲張りがよくないってわかっていても
その分集められたものが役に立つかもしれない
それならうちは、荷物の空きを確認して、探す
だから相談することもなかった。

どういえば丸く収まるか
そんなことを考えていたら、アスターさんは頭をかいた。
痒いわけじゃない。
それはストレスからだと、どうしようもなくなったときにすることだと聞いたことがある。
そうしたら、長い前髪の下に傷跡が見えた。
多分火傷と、裂かれてくっつけられなかった跡
うちが普通だったら、それをみてビビってただろーし、素直に言うこと聞いてたと思う。
でも、うちは、違うから
危険なことは大人に任せてもいいって言われても
日付もわかんないあの世界で誕生日なんか数えてないけど
たぶん、とっくに二十歳は迎えてて
たまたま、本当になんの意図もなく
行き先が同じで、同じ人数の別陣営戦う場で、相手に火を使う人がいた。
だから












言い返して……まあ、普通ならそう思うよねってこと言われて
自分よりずっと大人に頼み込まれて
みんなが頼りにしている人にそう言われて。
だけど、それに頷いたら
うちがやってきたことは
『要らぬ苦労』『無為な痛み』になってしまう
それは、それだけは
頷けなかった。

あの侵略戦争で負けて、
内訳がどんなに接戦でも、下された判定は無慈悲で
あの場にいた人も、居なかった人も、堕とされた。
それでも、うちらが戦った分だけ誰かが焼かれなかったと思っている。
残らない爪痕を、なかったことにしたくない。
無意味だなんて、言わせない。

ここまできたらただの意地だとわかっている。
わかっているから、と約束した。

それは、守らないとね!