Eno.66 浅岡百合子

リリィ-でもね、

 
もしこの記録を見る人がいたら勘違いしないでほしいんだ
春日さんがうちを見るときにちょっとだけ眉を顰めるのとか
アスターさんやこがくんに無茶するなって言われたりとかはほんとだけど

それだけじゃないんだ

レイちゃんは一度釣りに行くとすっごい沢山釣り上げてくるんだよ!
本当なら明かりをつけて夜に出ないと取れない(うちの世界だけかな?)
イカがとれた~!って嬉しそうに帰ってくるけど
サメがめっちゃいるんだよね!
絶対イカよりヤバイはずなのに大きな魚と混ざったらわかんないのかな?

はーくんは異文化っぽさそうって書いたけど
やっぱりそれは間違ってなさそう。
っていうか……こっからはうちの推測だけど
義務教育とか、子供の権利とか、そういうのがないのかも
うちの世界も「こども」って認識ができる前は
「小さな大人」、労働力として数えられてたらしーし
生きるのに必死な世界なら子供でもできることは手伝ってほしい
それは向こうの世界で感じたこと
その分、感謝は忘れなかったけど
でも「本当はそういうものじゃない」って知らなかったら
国が違って、貧富の差があったら
子どもが生きていくのは、きっとすごく大変なこと
春日さんもそれをわかってるのか……はわからないけど
はーくんのことを特に気にかけている気がする。

昨日は春日さんが指示を出しながら、フレンチトーストを作っていた
アスターさんもレイちゃんもすごいっていって、
それではーくんも「できた」ってわかったみたいだけど
フレンチトーストを食べた時のはーくんの顔は忘れないと思う。
おいしい、って思う前にしらないものにきゅーってなった顔。

料理もよくわかんない子が、フレンチトーストを作って
そのおいしさにびっくりしていて
もーリリィちゃんぼろ泣き!

……もし。
もしも、のはなしだけど
船に見つけてもらった後
来た世界に帰らないと行けなかったら
誰かについていくことが許されるなら
はーくんには、もっといろんな世界を知ってほしい。
アスターさんはどこにいくのかわかんないし、
春日さんも軍人なら自分の世界に帰ると思う。
レイちゃんは家族の待っている家に帰れたらいいとおもう。
でもうちはできれば生まれた世界に帰りたい。
ジニティじゃなくてそっちに行くことが許されるなら、
はーくんだって……って思うけど
そうしたいかどうかは聞いてないし、はーくんが決めること。
こがくんもきっと元の世界に帰るだろうし、

今日は船の汽笛が聞こえた
ここにいる、って花火を打ち上げたけど
船が迎えに来た時
うちらはどうなるんだろう

きっとばらばらになるけれど
叱られもしたけれど
楽しかったって、うちは思う。

だからもしこれを読む人がいるなら
ここに打ち上げられたうちらは悲しいことばっかりじゃなくて
うれしい、楽しいこともあったってこと
知っていてほしい。