【12 美しく咲け、青の華】
昨日の朝。
クライルが漂流船で見つけた大砲を磨いて、
空に綺麗な華を咲かせた。
こんな華もあるんだなと思った僕は、
火薬を手にして、同じものを作ろうとした。
夕。弓矢を手に狩りに行った。
成果はさんざんだ。
落ち込んでいたら、
ニライが狩りのコツを教えてくれた。
夜。僕のせいで、
話題が暗い方に行きそうになった。
だから僕は、作っていた花火を打ち上げた。
フロルの家に生まれたくせ、
碌に花魔法の使えない僕だけれど。
空の華なら、咲かせることが出来たんだ。
ハーデンベルギアの華を模したそれ。
花の意味は、運命的な出会い、
奇跡的な再会、幸福が舞い込む。
![](https://www.rabbithutch.site/usagoya/picture.php?user=Fellenteiki&file=D017B2A0-E732-4419-B573-6A980DFD093C.webp)
「……僕なりに、祈りを込めたんだ」
またみんなに会えますように。
僕はこの島での刹那の日々を、
ずっとずっと忘れないから。
深夜。また狩りに行ってみた。
ニライの教えてくれた通りにやってみたら、
最初は外したけれど、次でイノシシを獲れた。
……僕はちゃんと前に進めてる、頑張れてるよ。
その後でニライが、カレーライスという
とっても美味しい料理をご馳走してくれた。
あんなご馳走を、漂流中に食べられるなんて!
……幸せだったよ、これまででいちばん。
◇
汽笛の音が聞こえた。助けが来るのかも知れない。
そしたらみんなともお別れなんだ。
リシアンサスとクライルは、
この先も一緒だけれど。
![](https://www.rabbithutch.site/usagoya/picture.php?user=Fellenteiki&file=0EB2762C-0E99-4BED-B76C-E7DF29634CA2.webp)
「……寂しい、な」
どうか終わらないで、この日々よ。
そんなことあり得ないのに、
願わずにはいられないんだ。