Eno.441 クリー

墓守の記録

そこには二匹の番犬が居る。

彼らは少しの悪戯──供えた食べ物を食べ、物を拾い集める──と引き換えに、忠実に職務を果たす。
賊を払い、悪しきを祓い、内へ、あるいは外へ、出入りすることを許さない。
たとえそこに納めたものが何であれ、何と知らずとも。

協会の設立以降、物の保管場所・・・・・・は常に深刻な問題であった。
神器、聖遺物、真祖・魔獣の残骸など、例を挙げればキリはない。
特に残骸の類は、それそのものが一種の呪物となる。
葬るには惜しく、あるいは難く、それを保管するだけでも手が掛かる。

故にそれらは”埋葬される”こととなった。

エルストン家当主がこの墓場に目を付けたのは、二匹の特殊な妖犬の存在を認知したのが理由だろう。
彼らは妖精であると同時に、またアンデッドでもある。
埋葬された一匹の犬、その魂の残滓であると共に、身体の残骸でもある。

そしてチャーチグリムは、本質的にブラックドッグと同質である。

其は神へ、陛下へお仕えする教会の使者である。
其は祝福された、死の先触れである。
其の眼から逃れうるのは、神の御業によってのみである。

ならば彼らが神に仕える限り、誰が逃れうるであろう。

私たちは多くを知らない。
ここブリテンで過去、そして今に至るまで起きてきたことの一部しか知らない。
この場所に埋葬されたものが何か、彼ら同様に知らない。

しかし職務を全うするため、この二つを守ること:
彼らが何者であるかを理解し
我々が仕えるべきは神であり王である

このことを後世へ伝える。 18XX年 XX月 XX日 王立魔術師協会Queen's Lance ■■■■■■■■