Eno.715 シュリ

再認

……わたしには、"主"に求められる強さも誇り高さもない。
 そう見えるように振る舞っているだけだ。


あの時に伝えた通りだ。
この島はまた、わたしに脆弱な内心を自覚させる。

地位や名誉に重きを置くのはわたしが誇り高いからではない。
高い地位、名誉ある振る舞い、役割を全うして得られる評価、
それらに裏打ちされる立場の強さがなければ
己の望みが叶わないからだ。

兄上と故国の安寧、自らの行動の自由や選択の権利、
たとえ生涯を帝国のしがらみの中で生きるとしても
少しでも自分が望むように在りたいと。

先の漂流でこの石が見せたのは、
時を戻し過去の失態を白紙に戻そうとする姑息な心。

そして今は、皆の能力や親切心を一方的に利用し
自らの立場を守ろうとする利己の心。