Eno.44 永埜目 詠

居場所

小さい頃は、皆とさして変わらず遊べていたと思う。
連絡帳にはよく「大人しい子」と書かれていたけれど、その程度で。
男の子とも遊んだし、女の子とも遊んだし。
鬼ごっこも人形遊びも、どちらも好きでいられた時代。

最初に言われたのはいつだったっけ。

『おまえ、女なのに』

母に整えてもらってもすぐに跳ね回る髪の毛や、
次第に出てきたそばかすを指して笑われた。

『ながめちゃんって、女の子だけど』

両親はよくかわいい服を買ってきてくれたけど、
似合わないそれは女子の嘲笑の的になった。

そんなに本気で言われてるわけじゃない。
そんなに本気で虐められたりもしてないよ。
ただ、自分がいつまでも気にしていて、
自分の中にいつまでも残っているだけ。
それがずっと、足を引っ張って、
苦しくて、



「お前は魅力的だよ、永埜目。
 誰も笑いはしない。俺が笑わせない」





でも、先輩が言うなら、
その枷が少し緩んだ気がして。
だから、それなら、いいかなって、
そんな気がしたんだ。

ここにいればいつか、自分の足で歩けるかな。