Eno.166 セロカ・ネイ

6-4:個々人の想い

普段と変わらぬ者。
笑顔に痛みを隠す者。
概念から抜け出そうと足掻く者。
立場に縛られる者。
歓迎されぬ異形の者。
凝り固まった秩序からつかの間解放された者。
密やかに使命を帯びた者。

この島は複雑すぎる想いを乗せている。

それらは全て、この島と共に海へ還り、この世界の一部と成る。
そして、いずれまたどこかで島として再構成されるのだ。

汽笛が聞こえる。救助船を呼ぶことに成功はしたらしい。
別れの時は近づいている。


……何故僕は、呪文詠唱を失敗してしまった?
何故ここにいるのがなのだ?

僕では、縁が薄すぎる。
かつての島で結ばれた絆――或いはしがらみ――に、割って入ることができない。

もどかしい。