Eno.394 竹館 翔

ここに来る前の話

 某年4月。学校近くのゲームセンターにて。

「……」


「………………」


「何、めっちゃ見て来んじゃん」


「気にするな。
 クレーンゲーム上手い奴の技を見て盗もうとしてるだけだ」


「向上心豊かだな」


「お前に出来てこの桃内ももうちすももに出来ない訳がない……」


「取れなかったんだな……。
 ……このぬいぐるみ欲しいん? 別に全然やるけど」


「ほら取れた」


「!! 良いのか!? ありがとうたけかけ」


「竹館です。良いよ俺遊びたかっただけだし」


「ふふ……まさかこんな形で手に入るとはな。
 お前の名前は今日から『お前』だ」


「二人称そのまま名前にすることある?」



「にしてもお前、ほんとにこの辺で良く会うな。毎日ここに来てるのか?」


「毎日は流石に来ねえけど……。でもまあ良くここで遊んでる」


「暇なのか?」


「人を暇人みたいに言うな。暇人だけどさ。……今は」


「ふ……以前の姿と比べたら見る影もないな」


「お前俺の何を知ってんだよ」


「いや何も知らん」


「マジで何なんだよ」


「……あ!」


「何だ何だ」


「大変だ、学校にアジャスターケースバズーカ忘れて来た。取りに戻らないと……またな!」


何をって? 慌ただしいな……じゃあね」


「あ。結局ぬいぐるみ忘れて行ってんじゃん。
 まあ次会った時に渡すか…」



 この後帰りに海に落ち、めちゃくちゃ島に流された。