Eno.16 ミオソティス

【14 迫る別れと贈り物】

 
 海面が上昇してきた。
 船が停泊しているのが見えた。
 あぁ、終わるんだなと思った。
 終わってしまう、この島での生活が。

「…………終わりたく、ない」



 永遠に続けば良いのに。
 みんなと別れるんだと思うと、
 寂しくてたまらなくなって、苦しくて。

 いかないで、いなくならないで。
 子供みたいに我儘を言いたくとも、
 大自然には逆らえないんだ。

「……せっかく、みんなと、
 ともだちに、なれたのに」



 寂しくてたまらないや。

  ◇

 僕が居た証を残したかったから、
 鮮やかな花を勿忘草に変えて、ムーねーさまに贈った。
 僕を忘れないで、僕を覚えていて。
 この島にいるうちはせめて、いなくならないで。

 僕の中に潜む、
 寂しがりで愛されたがりの自分を知っている。

 そしたら、ねーさまは素敵なポプリをくれた。
 ……ありがとう、宝物にするよ。

  ◇

 クライルとリシアンサスにも贈り物をした。
 クライルには赤いゼラニウムのポプリ、
 リシアンサスには勿忘草を彫った指輪。

 君ありて幸せ、真実の愛。
 僕たち3人は、これからも一緒だ。

「……ふたりがいるから、
 寂しいだけじゃ、ない」



 寂しさに泣き叫ぶ心を、
 未来への想いで中和しようとしたんだ。