Eno.611 『藤見崎鉄』

9くらいだったかも

お船で帰る。
おうちに帰る。
噂になる前に帰りましょう。
夜がすぐそこまでくるのなら、
朝を迎えて帰りましょう。

海に沈んで、ウミボウズになるのはいやかしら



それに、お名前を返せなくなっちゃうものね



指を指揮棒に、ノイズ交じりの声で、ザザーざざ。


『もうすぐ、下校の時間です。校舎に残っている生徒は速やかに帰りましょう』



『先生、生徒の皆さん、さようなら。また明日』




学校で流れるような放送。
楽し気に少年は呟いたのでした。