Eno.17 明けぬ夜の灯台守

むかしのことむかしのこと

──彼の生まれた星は、のどかなところだったと言う。
いつも穏やかな風が吹いているような農耕の星。
人口は他の星と変わらないだろう。
小麦を育てていたのをまだ覚えている。

風に揺れる黄金と、ざらさら、としたざわめきを聞きながら、昼飯を食うのが好きだったことを覚えている。
麦を刈って、麦を刈って、それだけの生活だった。

のどかだった。