Eno.114 小浦千重

奇跡と船づくり

七曜の嬢ちゃんはせっせと真水作りに励み、
緑福の嬢ちゃんは忙しそうに走り回っている。
鹿の嬢ちゃんは場をよく盛り上げてくれた。
他の連中も木を切り、土を掘り、果実を採り、獣を獲りと
様々なことを協力して行った。
一緒に食事を囲い、ともに酒を飲んだ。
ビリーの兄ちゃんに、アルカの兄ちゃんと共に飲んだ酒は美味かった。
過酷なはずの遭難は、いつしか楽しいものになっていた。

そんな時、イチサブローの坊主が不思議な石を見つけた。
他にも何人か見つけていたらしい。

みやげの嬢ちゃん曰く、その石を使うことで『星の記憶』というのを見ることができるとのことだ。

『星の記憶』、かつての仲間達が探し求めていたもの。

当然、脱出が第一目標であったが、皆の頑張りで余裕が出てきた。
脱出の支障が出ない程度に、『星の記憶』の作成に手を貸すことにした。


さらに、驚くことにメナードの嬢ちゃんは魂だけの存在だったという。
魂だけであんなに実体感を出すことができるとは・・・。
しかし、その状態も長くはもたず、島の沈没と共に消えてしまうようだった。

そこで、この身体の女と同じような霊能的な力をもった、魔法少女な嬢ちゃんが
メナードの嬢ちゃんが消えないように画策していたらしい。
例の石を含め、島から集められる特殊なものを集め、メナードの嬢ちゃんの身体を作り出すものとのこと。

そして、その儀式は奇跡的にも成功した。


さらに、『星の記憶』の作成に必要なものも集めることが出来た。
それをイチサブローの坊主が空に掲げると
とても美しい光が空に降り注いだ。

あぁ、仲間たちが追い求めていた物を、ついに見ることが出来たのだ。
キラキラ光る何とも言えないそれを見ながら、涙が零れてきた。
『星の記憶』に対し、皆は様々な願いを唱えた。
俺の願いは・・・。


翌日、『星の記憶』による光が見えたのか、救助船がこの島にやってきた。
これで無事にこの島から脱出することが出来る。
俺の役割もここまでだ。

いや、最後の一つ、やり残したことがある。
それは『船』の建造だ。