Eno.328 天使グッドラック

グッドラック、エンジェル

海の中に沈んでいく、マネキン。
身につけた天使の輪と翼だけがかすかに光を放つ。


海の底へ、ぶくぶくと。


正直プロデューサーにはバレると思う。
だからちゃんと謝るつもりだ。

その上で、俺の意志は曲げない。
全部話して、絶対に納得してもらう。

俺は家に帰りたい。家族のそばにいたい。
じいちゃんの大事にしている田んぼを継ぎたい。
もっと学びたいものが、たくさんある。


「だから……俺は普通の、
 ただの幸運な人間に戻るよ」


『仕方ないな』とでも言うように、
沈みゆく天使の輪が点滅し、
やがてその威光をなくしていった。