Eno.53 ノア・イトゥドノット

23:終章[ノア,リシアンサス]

海水が上がり沈みゆく島
其れを眺めて無性に
『あの地に残れたら』と思ってしまう
残って島と共にすれば楽になれるんじゃないかと
何も考えずに済むのではと
……でも彼奴の

彼奴だけが私を友と呼んだ
『唯一無二の友達』"アルア・フィフス"からの願い希望だけはどうにか果たしてやりたかった
人でなしの化物でも…全ては果たせないかもしれないけれどせめて、それだけは----



"彼以外の誰をも信じていないのに?無意識に嫌悪しているのに?"

既に起きている矛盾に気付かないまま
自覚しないまま処刑人は自らに仮面を付け、役を羽織り
望まれた事を望まれた様に
『かくあれかし』を演じ続ける
其れが更に自らの頸を絞め続ける行為であっても
更に自らの心を腐らせていく行為であっても
嗚呼、何て滑稽で見てくれだけの『不誠実』極まりない芝居だろうか

如何なる絶望や憎しみ、悪夢等に曝されようと唯一残っていたもの誠実さ
それすらも擲ち、全てを失った事に
彼の処刑人は気付いていない


[ノア]





『永遠の愛』
ミオソティス・フロルからの『真実の愛』に対する答え
其れを誓う証


ミオから『真実の愛』を受け取った
其れに応えたくて必要なものを探し求めた
指輪は持っていた
だから後は灰汁や橙色のきのみとか手入れに使えそうなものをかき集めて気持ちを込めて磨いたのさ
だから…受け取って貰えて嬉しかったな
伝わってくれたって事だろうから

「嗚呼、とても幸せだよ」


さて、海水も上がりきろうとしている
そろそろミオとクライルを連れて島を出ないとだね
君たちの未来が明るいものとなる事を願うし
私は其れを全力で支えよう
だから、宜しくね?二人とも
各々、種類は違えど比類無き愛を持って私は愛すと誓う

当のクライルの気持ち想いを、心情を
愛の誓いを立てた彼の神は気付いていない


[リシアンサス]