Eno.85 牡丹

百花の女王

牡丹の花が風に揺れる。
沢山の日差しと水を浴びて元気に育つ。

そうして大切に育てられてきた、牡丹
『貴女はいずれ皆を導く存在になる。そうならねばならない』
生まれた頃からずっと言われてきた。

芍薬シャオヤオは?双子なのに、なんでムーと違うの?」

何度も聞いたけど、誰も答えてくれなかった。
そのうち諦めて、何も思わなくなった。
ただ、彼女からの刺すような視線だけは時折感じる。
けれど彼女も何も言ってくれない。言ってはいけないのかもしれない。

私が何をしたというの。
私はただ、皆から言われた事をしているだけなのに。

ただ、昔のように君と仲良く笑い合いたいだけなのに。
君は私の消滅を望んでいる。


なら。
……ならば。

なんて、この島に漂着した直後はそう思っていたのになぁ…。