Eno.275 奏川泉

Existence

帰ったらどれだけ経っているのだろう。
何日?何時間?それとも、何年も過ぎてて、
私はとっくに行方不明者として扱われているかもしれない。

気がついたら小さな島に流れ着いてて、まるで異世界のような人たちがいて、
でも友好的で、みんなで雨水をすすり、獣を狩って、木を切ってなんとか暮らして。

そんなことを誰が信じるの?家族?友達?マネージャー?誰にも言えるわけがない。


でも、それでいいんだと思う。
何がどうしてこうなったのかはわかんないけど、私はこの島での長くて短い日々を終え、
生きて脱出用の船に乗っている。
困難を越える力が自分にあった。
人を見捨てない心を持っていた。
私はここに、間違いなく存在する。
この経験があれば、きっと、これからも前に進んでいけるだろう。



……無人島ロケのオファーがあったら断ってもらおうかな、やんわりと。
高校生アイドルがやたら手慣れた薪割りをやってたらちょっと嫌だもんね。