Eno.320 妖精王オベロン

RE:Another1.『白月の妖精郷<ルナ・ブランカ>』


昔々あるところに、『白月の妖精郷<ルナ・ブランカ>』という妖精の国が誕生しました。
それは、行き場を無くした妖精たちが生まれる国でした。
しかし、星全体が滅びの運命にあり、妖精の国もいずれ滅んで無くなることが決まっておりました。

ある日、オベロン王は妖精たちに言いました。



『この星は、遠い未来に終焉を迎えるだろう。
ここにいたら、いつか妖精郷のみんなも死んでしまうんだ。
だから、新しい世界を見に行っておいで。
良いと思う世界があったなら、そこで自由に生きなさい』






そして、妖精たちはそれぞれが新しい世界へと飛び立って行きます。
オベロン王は、その様子をずっと見守り続けていました。



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白月の妖精郷、ルナブランカ。
地の底の迷宮。夢の世界への入り口。

妖精たちが歌い、享楽を貪る忘れられた楽園。
しかし今、妖精郷は滅びの危機に瀕していた。

遠くて近い未来。星が滅ぶ。
それは約束された未来であり、変えることのできない結末だ。


「当たり前だよね。この星を救うはずだったひとは、“いなくなってしまった”のだから」




一介の怪物ごときでは、星全体が壊れるのを阻止することはできない。
そもそも、抗うつもりはないのだ。

星と共に生き、星と共に死ぬ。
最期の光景を目に焼き付けて、愛するティターニアと共に星の海に沈むのだから。



「でも、こどもたちを道ずれにはできないよ。父親としてはね!」
「だからせめて、移住できる星を探して彷徨っている。つまり、引っ越し中ってこと」



「夢の国に連れて行っても良いのだけれど、妖精たちの成り立ちは“人間由来だから”、覚醒の世界のがいいんじゃないかな。
せっかく頑張って生きているのに、心神まで喪失してしまっては可哀そうだからね」





「まあさすがに、7日で沈む島には案内できないかな!あっはは」





RE:Another1.『白月の妖精郷<ルナ・ブランカ>』 終わり