Eno.337 或る虚伝より生まれ抗うモノ

No,23_星の記憶

どうやら、此の土壇場で。
例の、星の記憶とやらを完成させた、らしい。

出来上がった其れが、光となって消えた、其の刹那に聞こえた・・・・モノが在った。



"その海は数多の術者が挑み、そして敗れた海だ。
土地はなく、ただ広大な海だけが広がる、乏しく虚しい世界。
それを変えんと有力者が集い、そして皆等しく匙を投げた。

神秘、魔法、科学、奇跡……
遍く術の混ざりあったその海は、いつからか自我に近しいものを得ていた。

やがて、とある術者が世界の境界を開いた。
隔絶された世界の境界がこじ開けられたことで、その世界は瞬く間に歪んでいった。
術者の成果を蓄えた膨大な海は、その境界を我が物としたのだ。

他世界の海を取り込み、資源を溜め込んでは海を吐き出し、再び取り込む。
海は、いつからか貪欲なる海と化していた。

そして長い年月を経て。
かの海は多くの資源を蓄え、そして誰かに奪われる日々。

そんな『魔の海』は、今日も晴天の元に佇んでいる。"




それと、更に土壇場で見つかった石碑とやら。



研鑽重ね究めた我が術が果ては、やがて海とひとつとなり、多くのものを蓄えるであろう。
 外海の糧を飲み、富める海へと成った暁を我が見ることは叶わぬが、我は既に満たされた。

 沈みゆく我が故郷レムリア、この碑に刻み記し、かの海へと遺さん。
 どうか、意志なる晶を手にこの碑文を読む者が現れんことを祈る。




…………誰かが言ったが、全くもって傍迷惑な話だ。

だが、だからこそ。



何故、あの“画廊”に、此処に通じる“絵画”が現れたんだ?