Eno.359 大場川 福寿

*××

沈む。


沈んだ。


静かな海に。


帰る。

還る。




   .。o○

 「ね」




 「いつもどおり」



くらげは、漂う。

アヒルが上へと昇る。

クラゲたちは自由が好きだ。

水槽に戻ることはない。


残る言葉は、泡となって。


「たのしかったなぁ」


それだけのこと。

深い深い深海の底。
僕らは海に、縛られている。

またいつか。
どこかの海に流れ着いたその時は。

「思い出を語りましょうね」


カツン。

水槽が、地にあたる。
眠りについて。
夢の中。





小さなくまさんの背は、きっと大事なものでいっぱいになりました。
星型の飴に
彼のお気に入りの木の実。
それから、粘土の可愛らしいアヒルさんに
みんなの写真、島の写真。
おもちゃのアヒルさん――

それから、沢山の島の思い出を。



夢を、海を漂って。
大事なものを抱えて。


彼の待つ場所へと漂っていくのでしょう。

ゆらり、ゆらり。

光は遠く。