Eno.206 エンティティとフィン

最後の散策

「ティティー! プラスチックさん、おてつだい、いこ!」

「そうですね、やってみましょう。
 プラスチックなら浜辺でしょうが……あの辺りはひどく水没しているでしょうから、
 君は流されたりしないよう、私から離れないでくださいね。本当に」


仔細まではわからないが、料理を作っている横で、大量の素材が必要になったらしい。
煮込み終わったブイヤベースを火から下ろして、ほとんど海と区別がつかなくなっている浜辺へ。

資材を探して、ちっちゃい子供とでっかいのが、海水の下をサブサブしていれば、
まあ、当然ながら、船に乗っている方からも、子供が流されているように見えるわけで。

「あっ、あの、おぼれてないです! さがしもの、してて…
 おふね、もうちょっとだけ、まってください…!」

(予想外に目立ってしまいましたが、
 子供が残っているとわかれば、置いて行くことはないでしょうし、
 結果的に良かったと思いましょう)


あまり長く時間を取れなかったこともあり、二人で持ち帰った素材はお世辞にも多くはなかったが、
全員で集めた分を合わせると、必要分を満たせたらしい。

そうして、不思議な石と、山のように積んだ素材を使って、出来上がったものは、
島の上空へと光を放ち、キラキラと輝き始めた。
やりきった気持ちになった子供は、料理を持って船に乗るときも、ずっと上機嫌。

「おそら、ぴかぴかで、すごかったです!
 たのしかったね、ティティっ」

「そうですね。慣れない環境や、天候に悩まされたこともありましたが、
 総合的に振り返れば、資源の豊かな島だったことは間違いないでしょう」

「それに何より、予想外に消耗してしまったとは言え、
 最後まで探索が続いたことは、私にとっては好ましい状態でした。
 自分が収容されたとしても、私は蒐集家のイドラ、ですのでね」

「えへへ…
 ティティもたのしかったの、うれしいです!
 たのしいの、おそろいー」


乗船したら、船が出るまで、のんびりのんびり。