Eno.628 ヴィンシア・ローダン

船から見下ろす景色はどうだい

大きな船に乗り込んで、もうじき拠点でなくなるものを見下ろす。

携帯の時間はもうトチ狂っていて、流れ着いてから厳密に何日が経ったのかはわからない。
でも、そんなに経ってないと思う。あっちでいう一週間くらいかな。
あっという間に生活基盤ができがったのは記憶に新しい。まるで皆、そうなることがわかってたみたいにさ。

皆、器用で、頼もしい。僕がちっぽけで役立たずだなと思ってしまう程度には。
でも、それでも。
それを忘れてしまうくらい、同じ屋根の下にいて楽しかったのだから、
「まだ、帰りたくない」って思ったのは、不思議なことではないと思うんだ。

僕は、救助船には乗らない。皆が作った船に乗るよ。

幼馴染インディや店長には悪いけど、僕はもう少し、ここのみんなと一緒に過ごしたいんだ。