Eno.66 浅岡百合子

リリィ-沈む島、船にのる

 
海面があがってきたからか、船がこの島にとまった
錨?を降ろしたのかな
登れるように階段を出してくれた

こことは本当にお別れ

残っていた火をくべて、ぼんやり見ていた。

「……ああ、船に乗る前に伝えておかなければ。」

最初に口を開いたのはアスターさん

「私が船上で危険な目にあっていたとしても、助けようとしてはいけませんよ。
 巻き込まれてしまうかもしれませんから」


「船の上で危険……サメの嵐とか?」
「っていや、なんでそんなこと」

やっと、帰れるかもってときに
なんでそんな話を?
そう聞く前に、アスターさんは話してくれた

「私が死に続けていることは、以前話しましたね?
 何度も災難に会い、命を落とすなりなんなりして、別の世界で目覚めると。」
「……こうして帰れそうなチャンスがある時は、決まって酷いことになるのです。
 私が帰ることを拒むかのように、狙い澄まして。」
「それにあなたがたが巻き込まれてはいけない。」


「だ、だったら」
「船室とかにこもって、危なくなりようがないようにするとか、あるじゃないですか」
「それじゃあ、ダメなんですか」

「乗っていた乗り物ごとひっくり返ったこともあります。
 皆さんも乗っている船を転覆させる訳にはいきません」


なんでそんな、もうあきらめたように言うんだろう

「あなたがたは、無事に帰らなくては。」

「っうちは!」

アスターさんにだって、無事に帰ってほしい

思わず声を荒げてしまったけど、声だけじゃない。
目元を見れば、わかる

『期待した分、かなわなかった時がつらい』

それは……うちも知っている。
勝てばいいんだよ!って笑っていた最初
初めて負けた時の、力の差

だから、何も言い返せなくて
寝る前に用意してたものだけ、押し付けた。


……これが本当の押しつけがましい

なーんてね。

汽笛が聞こえる。
多分そろそろ出航だ。