Eno.652 クライル

(終)僕がこれから歩む道

この島での生活が、間もなく終わる。

潮位が上がって来て、救助船はすぐそこに来ている。

皆で船に乗り、そしてお別れだ。

この島で共に生きた皆。



ニライ…

ミオの心を救ってくれたのは、間違いなく君だった。

彼女を助けてくれて、ありがとう。

そして、僕にくれたクローク、大切にするよ。

いつか、君の心が何処かで報われる日が来ることを祈るよ。



アル…

君がくれたお守り、これがあればどんな困難も乗り越えられる気がする。

君とは、何処かでまた会いたいな。



ノア…

あやしいキノコの時は、率先して試してたね。

その好奇心は、ちょっと面白かったな。



ムーダン…

ミオの姉をしてくれてたね。

それで、彼女は大分助けられていたんだと思う。

ポプリ、ありがとう。



クロウ…

言葉は悪かったけど、もしかすると君がこの中で、一番優しい人だったのかも知れない。

次に会う時は、もっと素直になれている事を願うよ。



名前は分からないけど、黒い猫…

顎を撫でさせてくれて、ありがとう。

喉の振動…すごい気持ちよかった




そして僕は結局ミオと共に、リシアンサスに付いて行く事になった。

自分が居た世界を完全に捨てた、ミオと僕。

この先どんな世界が、僕らを待っているんだろうか。


それは、誰にもわからない。



でも、リシアンサスの導きのもと、彼女と一緒ならば。

僕はこの先に待ち構える艱難辛苦から、彼女を守る力を得られる気がするんだ。



彼女は…ミオは。

もっと強くなると言っていた。

だけど、一人では出来る事に限りはある。

もしかしたら、その時にリシアンサスが居ない事もあるかも知れない。


だからこそ。

僕も強くあろうと思うんだ



いつか、リシアンサスの庇護を離れて。

彼女が独り立ち出来るようになったその時に。

僕が代わりに、彼女を護れるように。


それが果たして、いつになるかは分からないけど。

彼女への想いを、僕から伝えられるように。




それまでは、僕の心の中にそっと閉まっておこう。

僕があの船で拾った、ネックレスと共に。

例え報われなかったとしても、僕はそれでいい。

君を変えた一人が、僕であるように。

僕を変えたのは、君だったから。