Eno.659 疾風刀

花波シオンの記録【1】

 ここ最近単独活動が多かった私たちは、久しぶりに一行パーティ全員でひとつの依頼を受けた。

『海辺で行方不明になったひとたちの捜索』――それが今回の依頼内容。

 実は以前コレと同じような通報があって、その時はアテリアの友達のランと、託都っていう男のひとと、クラリスっていう女の子の三人だけだったんだけど、今度は大規模で、集団で行方不明になったんですって。
 確かこの時、レイワが『何処か知らない異世界に飛ばされたかもしれない』って推測していたらしいから、今回もその可能性を疑って早速大海原へ漕ぎ出す事にしたわ。
 捜索兼救助船は依頼を出した団体が出してくれたんだけど、全員一緒に乗るのは効率が悪いって事で、用意された四隻に一人ずつ乗る事に……って結局単独行動じゃない? これ?

 まぁそんなこんなで、海の船旅を満喫……している場合じゃないんだけど、とにかく行方不明者の捜索をする事にした私たち。
 飛ばされた先の異世界が海だけだったらどうしようもないけれど、例えば無人島なんかがあれば、そこに遭難しているかもしれないわ。
 同じ島に流れ着いた遭難者同士で手を取り合っていれば、現在いまも生きている可能性は高いハズ。

 そう思っていたのだけれど……。

『へい、こちらサバイバー。見つけた限り全部の島を確認したけど、生存者が居ないどころかほとんど沈み切った痕跡しか無かったぜ……』

『こちらディーマだ。……残念ながら、こちらも生存者を発見する事ができなかった。どうやら彼らは、協力し合う事ができなかったらしい』

『こちらレイワ、同じく生存者の確認は取れず。依頼を受けたのが一足遅かったようだな……あと一週間、いや、せめて一日前だったならば……』

 それからどれくらい経ったか、他の船に乗っていた三人からそれぞれ連絡が来た。

 でもどれも吉報じゃなく、凶報ばかり。
 私は深い溜め息を吐き、沈痛な面持ちになった。

 肝心の無人島が沈んでしまったら、それはもう海だけの世界と変わらない。
 海に生きる種族でも無い限り、陸地無しでは生きていく事ができない。

 事実、私が今まで見つけた島々もほとんどが沈み切っているか、或いは辛うじて面影を残していても、恐らく遭難者同士で争った痕跡や、島に生息していた野生の生き物に襲われた痕跡しか残っておらず、ここまで生存者は一人も見つからなかった。

 今回の依頼は諦めて、私も収穫無しって言おうとした、まさにその時だった。

「し、シオンさん! あそこに島があります! しかも、沈み始めて間も無い島が!!」