Eno.675 卜部 つばめ

シマの記録

永きに渡る遭難生活もこれで終わりだ。
永きって程でもないな。たった7日間だったし。
最後の手記くらいは丁寧に文字を書くか。
浮かんでいた気掛かりも大体は解決した。成果は上々ってとこだろう。

灯台守は。
灯台守についてはよくわからなかった。
でも、それで十分にいいのかも知れない。
奴は、宙と空の狭間もない世界で灯台を一人で管理していて。
本当なら肩の凝る役割を担ってるんだろうが、話す分にはとっぽい兄ちゃんなんだから。

ラザロは予想通り。凡そ悪魔と認識していいものだった。
ありとあらゆる人の望みを叶える蠱惑の魔性。
放っておけば世界を滅ぼす災厄にすらなり得るかも知れん。
なので持ち帰る。次。

シュティエという天使は、人類種の敵であるようだった。
幾らかの邂逅を経て、なにか会話に齟齬があるとは思っていたが、
奴は奴で、天使という上位存在であるのだと理解した。
次に出逢う時は敵同士かも知れない。向こうはそう思ってないんだろうけどな。

悪魔の協力もあって、この無人島が抱える謎についても解決した。
この世全ての奇跡が放り込まれた実験場だった訳だ。
貪欲なる海に大口開けて待たれていただなんて末恐ろしいね。
一刻も早く机に向かって文字を打ち込みたい。記憶が鮮明な内に。
にしてもあいつ、しっかり使い魔アピールして来るとは思わなかったな。

ま、大方そんなところか。とにかく収穫はあった訳だ。
これにて無人島での生活は幕を閉じる。
独りではきっとどうにもならなかったろうな。
島での出会いに感謝しよう。また、いつか、どこかで。