Eno.705 小烏丸

無題

─────ずっと、問い続けていたことがあった。

自分達がこの島に迷い込んで、7日が経ち。船の上で、今までを夢想している。
時の流れは決まりきっていて、ただ流れるものとばかりだと、ずっと思っていたのに………あくる日々は助走もせずに飛んでいく。
そのくせ昨日の事も、一昨日の事も、一番最初の瞬間も、何もかもを色濃く、鮮やかに刻み込んでいった。

焼き魚の塩味、間違えて食べた生肉、焼いたイノシシ、初めての鍋、喉を潤す水の冷たさ。
次々出来上がる用具、大きくなっていく蔵、ようやくできたこんてな、壁と大砲、空を彩る茜の花火。
簡素な食料と手間をかけた料理の違い。
自然の豊かさと文明の柔らかさ。
幽世が迎え入れなかった生命の力強さ。

この身をもって味わった。
知らなかった。知ろうともしてなかったのだと気づいた。


ずっと、問い続けていたことがあった。
何故、幽霊自分に生活が必要なのか。
何故、幽霊自分に食事が必要なのか。


━━━━━━━━これから、必要になる生きるから。

小烏は一つ答えを付け、二度と問う事はなかった。