Eno.730 三三九里 八二子

824にっき6

骨。根。種。
過去。現在。未来。
自然のサイクルへの感謝と、未来へ進むという決意。

この島の自然を表す白と、
わたしたち流島高校生を示す青緑。
ふたつの狼煙を立て、この島への感謝の意を示すこととしました。
最も高い場所に設置したので、島が完全に水没するまでは煙は登っているでしょう。

島が沈むまで。
初日に流れ着いていたボトルメッセージの通り、
たった7日間でこの島は水没することとなりました。

これだけ短いサイクルで海抜が変化するのなら、
島の動植物はどのような生態を持っているのでしょう。
地球のそれと同じように見えましたが、
精査すれば違いが発見できるかもしれません。
もしかしたら『ウサギ』や『イノシシ』は、
海中生活に適応しているのかもしれません。

残念ながらわたしたちにはそれを直接確かめるすべがありません。
救助船とは併走できそうですし、機会があれば聞いてみたいところです。

わたしたちは、寄って立つ地面がなければ活動することができません。
船があったとしても、短い期間であれば釣りと雨水でしのげるでしょうが、
陸地に寄港しなければ栄養不足で倒れることとなるでしょう。

あの島でわたしたちは文明を築きましたが、
それは島が海に飲まれるまで、
たまたま人類の生存に適した環境が維持されていた、
ごくわずかな期間の繁栄にすぎませんでした。
それはおそらく、地球であっても同じことなのでしょう。

地震や嵐、豪雨災害、疫病の流行。
温暖化や寒冷化、砂漠化。
破局的噴火に全球凍結。
太陽風の変化に隕石の飛来。
ガンマ線バーストに真空崩壊。

人類の繁栄の礎を揺るがす事態の可能性はいくつも示唆されています。
人類が、人類から産まれたわたしたちが、
いまここにあるのは自然がたまたま
それを見逃してくれているからにすぎないのかもしれません。

ですが。

ガミネ先輩やグレイテスト先輩のような方々は
なにか対抗策を考えるのでしょう。
森野先輩のような方は新しい環境の自然と対話し、
調整をするのでしょう。
そうしてつけられた道すじの上で、
建物を建て、料理をし、舞台を演じ、スポーツをし。
「いつもの生活」を続けようとする人々がいるのでしょう。
そうした「いつもの生活」を脅かす者から
人々を守る者もいるのでしょう。

そして、諏王様や大船様のような方々は、
嬉々として未知に飛び込んでいくのでしょう。



ふたすじの煙は空へと昇っていきます。
いつか人類は、ワオ様やなずむ先輩が待つ、
あの空の彼方へ到達するのでしょう。

そのときにはきっと、わたしたちの仕事――。
人類を活かすために人を管理する仕事など、必要なくなるのでしょう。

その日が来ることを、わたしは願います。
その日が来ることを信じて、
いまはこの個とともに、人類に学ぶとしましょう。

――いつか、あのほしにとどくまで。