Eno.760 ゲイラヘル

5000年ぶりに“再発見”されたアラストルについてのレポート

学名、アラストル・ステリア。その発見の経緯から、元の世界では、シーラカンスとよく並べられている。
六重螺旋の遺伝子からなり、詩魔術なる種族固有能力を持つなど、基本的には絶滅種であるアラストルの特徴を殆どの引き継いでいるが、その実態は星の子、と呼ばれる半妖精種に変貌しており、学名はそこから取られている。
星の子となったことで妖精眼グラムサイト精霊炉フェイ・リアクトと呼ばれる能力を獲得している。

妖精眼は嘘や悪意を見抜くとされており、目に備わった力であるため、失明させたり目を閉じたりすることで無効にできる。精神性の都合、元から人間のような大規模な社会の形成はできないとされていたが、妖精眼がある今、嘘や悪意の渦巻く人間社会の形成・適応は望めない。外界から隔離された彼らだけの小さな集落で、細々と生きて行くことが運命づけられている。カカポなどと同じように。
一応、専門の教育と訓練を受けた個体が部分的に人間社会に関わっているものの、定期的なメンタルチェックは欠かせない。

また、それとは別に、銃を肌身離さず持っていないと著しいストレスを受ける。模擬銃でも、ないよりは遥かにマシである。曰く、持たない個体は全て死んだということで、密漁によって牙のない象が生まれている、というのと同系の淘汰圧がかかったことが推測されている。同時に天性の射手だが、生き物の殺傷で大きなストレスを受ける個体が多い。

肉体の劣悪な燃費は変わらないものの、精霊炉の体得によって、魔力を取り込み、活動エネルギーに変換することが可能になっている。これによって“食べるために生きている”状態から開放され、カロリー以外の必須栄養素だけ食事から摂取すればよくなっている。勿論、食べることは否定されないが。

また、300年あった寿命の枷が取り払われており、現在の彼らは寿命で死ぬことがない。成長は20歳前後で止まり、以後不老である。
元から人間との交配確率は低かったが、更に人間から離れたために天文学的な確率にまで低下している。
寿命が存在しないにも関わらず200人未満から2000人以上への増加に2000年かけていることからも、基礎的な繁殖率が壊滅的なレベルにまで下がってしまったことが伺える。最小存続可能個体数を遥かに下回った時期があり、瓶首効果で遺伝的多様性に乏しく、近交弱勢に苦しんでいるようだ。

ちなみに、その肉に秘められた寿命を伸ばす御利益もまた、そのまま引き継がれている。天使達が睨みを利かせているものの、命を狙われる危険が常にあるとされている。