Eno.433 コンラード・N・A・ウエザラル

奇跡はここにある。

 

コンラード
「こんな・・・・こんな奇跡が、あって良いのか?
 これだけで・・・・僕は救われる・・・・ありがとう
 エイリーク達・・・・そして・・・・必ず『また明日』
 君達と逢おう・・・・必ず・・・・!」




まさかキノコの力で『一番最初のエイリーク』・・・・紛れも無く僕の
代わりに作られたエイリークが目覚めるとは思わなかった。

彼は・・・・僕が『ホームレス』に装った『アイツ』に刺され・・・・
僕自身が食い殺された時に残った僅かな部分から作り上げられた最初の
存在・・・・そして僕の中の『原初』を生まれた瞬間に奪い取り最初に
その身に宿したモノ・・・・僕以上に僕を演じていた・・・・・・・存在。

そんな彼と話して本当に幸せだった・・・・僅かな間でも。

そして・・・・作られたエイリークの人格達は全員、海に還る事を
望んでいる事を知れた・・・・あゝ・・・・僕の勝手な判断で彼等を
沈めてしまう事が気がかりだったから・・・・でも彼等は全部・・・・
全てを知っていた・・・・知っていたからこそ海に還る事を望んでくれた。

何時までも、その時間は続くわけでも無く・・・・最後に彼等は特別な
プレゼントを残して行ってくれた。

そう・・・・この新しく人格が生まれた存在・・・・作られていない
完全なオリジナルのエイリークに素敵なプレゼントを贈って行った。

会話が出来るようになるくらいの知能と発声機能・・・・聴力の回復
・・・・流石に目の方は無理だったようだが・・・・光を感じる事で
何処に誰が居るかまでは分かるようになった。

本当に奇跡だ・・・・こんな事があっていいのだろうか?

いや・・・・有っていい!!

『僕達の境遇』を考えると、これでもまだ足りないくらいだ!!

そして・・・・僕は『新しいエイリーク』と会話を交わす。

その意思を・・・・希望を聞く。

彼の答えは・・・・共に深海で長く暮らす事だった。

共に海へ還るという強い意志を見せた。

だから・・・・僕は、それに従う。

一緒に・・・・還ろう・・・・エイリーク・・・・深い海の底へ。


そして・・・・見送ろう・・・・漂流者達を・・・・。


僕達は、この沈みゆく世界から・・・・ずっと一緒に寄り添いながら。