Eno.44 永埜目 詠

この海の中に

最初に見つけた便箋によれば、今日で島も完全に沈む。
最後だから一通り島を歩いてみた。
随分歩きづらくなってたけど、他に何か探したりしなければまあ楽な道のりだ。
岩場を見て、諏王くんと大船くんの戦いの跡を見つけて、
森林を見て、シュヴァイツァーくんが呼んだデスサッカー部の人たちがちゃんと船に乗ってるのを確認して、
離島を見て、真新しそうな神殿を見つけ、
漂流船を見て、…………。
…………あの、新しい血は、誰のものなんだろう?
その謎は、分からないままかもしれない。
皆に訊いても僕らの他に人はいなかったみたいだし、
誰かが置いて行かれる、なんてことも、おそらくは、ないはず……。

それから、砂浜。
烏丸先輩といっしょに建てた東屋で、
なぜか一緒に寝ることになった。
せいぜいが膝枕だろうと思ってたんだけど、なんか、
こう、
…………。
抱き着く方だった…………。
緊張しすぎて寝れませんでした。
抱き心地悪いの、分かってくれたと思うんだけど、妙にすっきりした顔してるんだよな。
なんなんだよ。

なんなんだよといえば、っていうのもおかしいけど、
船が出発する数時間前になってグレイテスト先輩が催眠治療アプリを持っているとかで盛り上がった。
グレイテスト先輩を信じて実験台になったんだけど、
結局僕には効きませんでした。
烏丸先輩は隣でサキュバスサキュバスうるさくて、本当に何?
真夜中サキュバスってなんなの???
ちょっと今後の付き合いを考えないといけないなと思いました。

篠村くんにつつかれて、僕が触っても大丈夫になったんだねって言ってもらった。
それでようやく気付いた。
もう砂に文字を書かなくていいし、触られても飛び上がらなくなってたってこと。
あっという間だったけど、ずいぶん変化があった7日間だったんだな。

あとはちゃんと帰れるといいんだけど。

貪欲な海へ。
僕らの思い出も、美味しく呑み込んでくれるとうれしいです。