Eno.559 アスター

罪科

呪いには心当たりがある。

私は弟を殺した。
そうと知りながら、死地に向かわせたのだ。
わずか齢七歳の幼子を騙した。
彼は獣に食われて死んでしまった。

弟は、モンドは神に祝福されていたから。
英雄の器と呼ばれる程の才能豊かな身体。祝福の青い瞳。
何もかもが彼に微笑んでいて、私には微笑まなかった。
だから、愛憎と嫉妬に狂って、殺した。
仕方がなかった。だって、彼は私の全てを奪っていくから。
視線も、味方も、肯定も、全て、だから、奪い返すしかなかった。


私の赤銅がそうであるように、銅は忌まれる色だ。
だから余計に差がついた。

双子の子が──娘が幸運の白金色、息子が黄銅であった時。
絶対に、私と弟のようにはさせない、
憎み合う姉弟にはさせないと誓った。

あの子らは今、どうしているだろうか。




妻子をもうけ、幸福の絶頂にあった私を呪いが襲ったのは、
きっと私の幸福を許さないからなんだろう。

だが、それがなんだと言うんだ?

この呪いの正体がなんであれ、私の幸福の邪魔はさせない。