Eno.48 ニライカナイ

13:報告書終

─────以上が各ロケーションについての見解である。

…………………
………
……

以降記されるのは、船が果てに到達した後の話である



 船に乗った俺は、いつの間にか意識を失っていた。
 目を開けると、青空が広がっている。けどもその下は半分は海だけど、岩混じりの岩礁だった。

 また流されたか……?とゆっくりと体を起こす。

「ッ………」

 頭が痛い。投げ出された時に頭でも打ったか。
 しかし、なんだろう。なんだか見覚えがあるような場所だ。どこだっけ……


「……居た!!!居たよ!!!!」

「……!」

 聞き覚えのある声がしたかと思えば、足音がふたつ。
 どたどたと来たふたつの影は、俺の傍に来て止まった。

「ニライ!ニライなんだよな?!」

「どうやって帰って……ううん、今はいいや。それより、怪我。怪我が……!」

 オリーブグリーンの髪と、コバルトブルーの髪が目に入る。
 同期で親友ダチであるイーハと、上司だけど、同じく親友のカルナ。

「お、落ち着け。大丈夫、多少な……ら………」

 立ち上がろうとして、ぐるりと世界が回った。力が入らない。あ……れ…………

「ニライ?ニライ、ねえ!……ダメだ、気を失って…………

「……けい、はや………………」



─────────


 そのあと目を覚ましたのは、医務室で。失血によって気絶したのだと言われた。

 少し回復した頃に、挨拶と謝罪まわりに行った。

 レギン隊長には軽いお小言は貰ったが、それ以上にめちゃくちゃ心配された。

 師匠からは「鍛錬が足りんな!」なんて笑われてしまった。けど、肉食って休めって。

ヤマトカスは……今日はいなくてよかった。


 アガルタには、なんだろう。「よかった」とだけ言われたな。


 とにかく今は、1度部屋に戻ってきていた。

 あの島は夢だったのだろうか。いや、けど、それにしては様々なことがリアルすぎた。夢だと思いたくはない。


 部屋のノックが鳴る。入ることを促すと、そこに居たのはカルナだった。

「カルナ。どうしたんだ?」

「うん。きみが流されてきたところの隣に、流れ着いてたものがあったんだ。本来は調査対象として接収されるけど………隠蔽かくしてきちゃった

なんて?


 よいせ、とカルナが収納魔法付きの箱を置く。しかし、何が入っているんだろうか。

「僕も見たいし、開けてみてよ」

「おう。ちょっと待…………て………………!」


 ねこのぬいぐるみ、旧式斬鉄斧………それに、蒼い御守りタリスマンにふたつのポプリと勿忘草ミオソティス

 あの島で、友人たちダチ共に貰ったプレゼント。

「…どうしたの、ニライ。泣いてるよ……?」

「えっ……」

 はた、はたと落ちた涙に気が付かなくて。

 袖で涙を拭う。


「……いや、なんでもねえ。ただ、ありがとな、カルナ。大事なんだ、これは………」

「……深くは聞かないよ。君が流され着いたって言う島のことで、言いたくないことがあれば言わなくてもよくするからさ、今は」


 きちんと、休んでね。そう言ってカルナは出て行った。


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 数日後には回復して、師匠の訓練に復帰もはじめた。
 無くしたと思ったガンブレードは、どうもカルナやイーハが持っててくれたらしい。良かった。


「ニライ!!!遅れんぞ?!?!!」

「今行く!!!」

 朝の忙しい時間、イーハに呼ばれて部屋を飛び出す。これから、森林地帯の調査任務だ。


 これからも、この憎悪と渇望は消えないだろう。

 けど



 それが思い出と同居しちゃいけねえ道理はねえだろ?










オレンジのリボンが巻かれたポプリが風に笑った。

ハーデンベルギアと、勿忘草ミオソティスのポプリが本棚から見ていた。


蒼の御守りタリスマンを脚元に抱えたねこのぬいぐるみが、ひなたぼっこに目を細めていた、気がした。











End_To be Continue.