Eno.355 トリネコの樹

独白


私は罪人だ。
だから流罪となってすべてを飲み込む海に飲み込まれに来たのだ。


──なんて、さすがにひどい冗談だろうか。

私の妻を捨て、私が捨てた世界は、私が去った後一体どうなったのだろう。
考えない訳ではなかったが、それでもこの願いには替えられなかった。

だけどこの島で出会った仲間たちを見ていたら、案外私がいなくてもやっていけるのではないかと、
そんな都合の良い考えが浮かんでしまう。
人間とは逞しい生き物だ。なければ新たに作ればいいとは、この島で学んだことだ。


遥かな海、ジーランティス。
この星の記憶を浴びたとき、私は確かに希望をみた。

すべてを取り込みひとつになるというのなら、やはり妻もこの海の中で眠っているのだ。
ならば私もそこへゆきたい。
混じり合い、ひとつになって、同じ墓で眠りたい。

魔性の海、ジーランティス。
どうか私の願いを聞き届けておくれ。

もう一度、私に名をくれた彼女に逢えるように。どうか。