Eno.802 七瀬 克彦

宵口帝・七瀬 克彦

 県立宵口中学校の長い歴史の中で、七瀬 克彦の名は唯一無二の生徒会長として教職員達に悪夢と胃痛として刻まれ、功績を己で讃えた銅像が二宮像の代わりに建てられた。
 京大以上に自由FREEDOMな風が校内に吹き荒れ、ノリと青春特有の根拠のない自信と暴走特急な衝動の喧騒も彼が卒業すると同時に少しずつ色褪せて、今ではセピア色の思い出だけが、大人となってしまった卒業生達の心の奥底に青春アオハルとして棲んでいた。

 宵口高校に進学した彼であるが、卒業を待たずして、彼は失踪し、両親と警察の必死の捜索にも関わらず、何の痕跡も掴めなかった。街中に貼られた彼の捜索写真は平成の残滓であったのかもしれない。神隠しから暫くが経った頃、家族ぐるみで交流のあった隣家を狙った国際犯罪組織のテロに巻き込まれ、七瀬 菜々美以外の家族が犠牲となった。仇を追って単身北米に飛んだ彼女の消息も曖昧で、一説には北米の伝説的探偵ジャック・スレイド率いるスレイド・カンパニーでよく似た日本人が目撃されたが、スレイド・カンパニーが壊滅した現在、それを証明する術もない。