Eno.83 觥 絵馬

報告記録07

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――…。

「…ん。意識が戻った様だな。」

此処は。

「手術室のままだ。用意はしているところだが、ベッドが足りん。」

……身体反応に、異常。

「間に合わせの旧式アームを括りつけた。
 接続規格が合わないから、異常検知もするだろうよ。」

「他は?」

……思考と、記憶に、不明瞭な点が見られます。

「嗚呼。投薬で、頭を鈍らせてるからな。」

何故でしょうか。

「お前のPTSDトラウマが、治療に差し支えるからだよ。」

「死にてぇ死にてぇ、ってアタマが喚いてると、身体も引き摺られるもんだ。」

…私は、死にたかったのでしょうか。

「そういうツラだっとは思うが、さぁな。
 お前以外には、お前の頭ん中の事はわからねぇよ。」

……思い出せません。

「思い出すな。今はな。」

私は、生きるべきなのでしょうか。

「知るかよ。治すし、直すが、その後で生きたいか如何かは自分で決めろ。」

……。

「嗚呼、そう言や訊きそびれてたな。お前、名前は?」

アーティラリー・エマです。

「エマ、ね。」

墓碑には、その様にお願いします。

「……アーティラリーは兵科のこった。名乗るんなら、エマだけにしときな。」


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