Eno.630 野良裏 蔵斗

海の上で

船に乗り込んで暫く経つと島は徐々に水に浸り始め
あっという間に陸が消えてしまっていた。
ここで暮らすのもありかあ、なんて思っていた時もあったが
さすがにちょっと青ざめた。
ギリギリ間に合ってよかった。

こんな事なら島のもの、もう少し持ち出しても良かったな……なんて。

結局手元に残したのは一枚の金貨。
小さいし荷物にもならないし、記念的な?
古びているが太陽にかざせばキラリと光る。
まあ、もしかしたら価値があるものかもしれないし?
果たして帰還してもこいつは手元に残ってくれているだろうか。

静か。
慌ただしく過ごしたあの島の姿は、もう無い。
さあ、あとは無事に帰るだけだ。