Eno.85 牡丹

潮風に揺れる花

皆の頑張りもあり、無事に島に救助船が来た。
それに乗り込んで、遠ざかっていく沈みゆく島を眺める。
最後の日、島全体を歩き回り導だけは残しておいたが…
海に消されてなければ大丈夫、かもしれない。

『…流石に疲れたけどね…』

肉体的にも精神的にも。
今にも眠ってしまいたい気持ちをぐっと堪え、
片手に牡丹の花を咲かせ、それをぽいと海に流す。
たった一輪だけだが、せめてもの餞と。

自然達の声が聞こえない、静かな海。
こんなに静かな時間は殆どなかったような気がする。

『戻るまでは、ゆっくり眠れそうだなぁ…』

貰った勿忘草と黒い包帯を眺める。

あぁ。やっぱり、お別れっていうのは寂しいな。