Eno.559 アスター

果ての旅路

 
「海ばかりの世界……そんなところがあるのか。」

「次の旅先はそこにしてみないか?」

「馬鹿言えクリス、全部流されるような場所でゆっくりバカンスなんてできねえよ」

「あら、でも海は素敵じゃない。4人では行ったことなかったかしらねぇ」

「そうだそうだ、ぜひ次の旅先は海にしよう!」

「ったく……わかったわかった、海のある場所を探そうか。」

「やったー!頼んだぞクレフ!」

「でもそれだけじゃ絞れねえぞ、他に希望は?」

「そうね、花が見たいわ。花鳥風月が綺麗なところがいいわ」

「闘技場があるところがいい!」

「お前はもうちょっと母さんの優しさを見習え……」

「ぶー」

「……で、父さんはどうする?」

「そうだそうだ、とうさまの希望も聞かなければ!」

「あなたはどこがいいかしら?」




私は、

あなたたちと一緒なら、どこへでも。




「うふふ、あなたそれしか言わないんだから、もう♪」

「まあ知ってたよ……じゃ、その条件で探すとして……」

「次の旅も楽しもう、とうさま!」





それはずっとずっと先、旅路の果ての果ての話
最後の獣になった男が、救われた先の旅路
幽玄の男と、藤鬼の女と、騎士の娘、術士の息子
不幸の歴史を塗り返す、花束のような家族旅行記

また語られる日まで、閑話休題。



あなたがたが、幸福でありますように。