Eno.385 フェルス

渡り竜の伝承

ある時代、一体の竜が居た。

その存在は不確実なもので、ある者は岩石の塊のようだと述べ、またある者は純白の神々しい姿と述べた。

ある者は贄を要求し、大地さえ軽々引き裂く邪竜と語り、地面だと思っていたそれに気付かず、尚襲われる事もなかったと温厚な竜だと述べる者も居た。

こういった話は数が少ないものの、不思議と様々な地方、時代に散見され、同一種か、はたまた何らかの方法で身を隠しているのか、など、時折話題に挙がることがあるという。

ある時代では住みかを突き止め調査を進めた事もあったらしいが、ある時を境に、まるで何も無かったかのように、忽然と姿を消したという。そうした事から冗談混じりに、様々な時代を渡っている竜、なんて唄い出す者も居たそうだ。

そうして尾ひれの付いた話は、やがて伝承となり様々な形で唄われる事になったという。

その竜の名は、フェルニゲス。
とある地域では、今でもその名で伝わっているそうだ。