Eno.26 アルセ・K・ディアス

一面の海を眺めて

救助された後は出来る事もほとんど無く、今はただ一面の海を眺めている。

まさか船の上で道路を作って更に設置までしようとする奴が出てくるとは思わなかった。本当に何処まで建築したがるんだ。

その後はお互いの事をそしてお互いの世界の事について話したり、その中で幾つかとんでもない内容もあったがもう全てを知らなかった事にしよう。それぞれが別の世界に帰って、こちらの世界に害が有る訳で無いなら別にわざわざ言い触らす必要も無いだろう……『手帳』の件についてだけは悩んだが、どうせかつて召喚された俺みたいに幾つも世界を渡航する方法があるのだから悪用された例が見つかるまでは黙っているとしよう。現物を見た訳じゃ無いから確たる証拠も無いしな。

船内アナウンスでまだ一日以上かかる可能性があると伝えられた時は思わず崩れ落ちてしまったがあれから何だかんだ時間は過ぎて後はかかって数時間といった所だろうか、お別れの時はもうすぐらしい。元の世界へ戻るタイミング次第では出来ないかもしれないが、叶うなら最後に別れの挨拶はちゃんとしておかないとな。

異世界への漂流と孤島でのサバイバル生活。まるで番外編みたいな出来事が起きて、何だかんで消滅を逃れて無事に救助された『おしまい』の後のおまけも終わるまで後少しらしい。

今回の事は忘れようと思っても早々忘れられないが、それでも自分が有り続ける中で少しずつ忘れていってしまうのだろう。だからそうなる前に帰ったら急いで日記に書き上げないと。
俺が後何年存在出来るかはわからないが、例え何十年何百年経っても忘れないように、この出来事は覚えておきたいのだから。

この世界での出来事が『おしまい』を迎えても、家に帰って家族に「ただいま。」を告げれば再び日常が始まる、俺はその時を待ち望んでいる。

「さようなら絶海領域ジーランティス、もう二度と俺をこんな場所に呼ぶなよ。」