Eno.69 キリル・クリロフ

船旅の終わり

部屋を借りてゆっくりと今後の事を考えている内に、「海域」を抜ける時間が近づいてきた
この船旅も終わりが近い。すなわち、帰還の時だ
……水道管だったのだが、まぁ、恐らく何とかなるだろう
今仕事をしている町に構えた拠点へ戻る「家路の護符」は予備があるのだし

――思う所が全くない、という事は無い
親がいたかも知れない
兄弟がいたかも知れない
帰る家があったかも知れない
背景だって推察した範囲を出ない
実際の物とは違う可能性も高い

だが、私はそうだと判断した
そしてその判断に従って、行動すると決めた

決断と決定は済んだ
ならば、後は行動あるのみ

たとえ
その結果として、何が起ころうとも
誰がどれほどの涙を流そうとも
あるいは血が流れたとしても

それは私の決断の結果であり、私の責任だ
私が背負うべきものだ



まぁ
自己判断が出来ない子供ですら私財は没収されるから石を飲み込もうと判断する
その環境が「良い」とは、少なくとも私は全く思えないのだが

……『手帳』か
それがあれば或いは、元の世界にもかえ……す事はたぶん無いが
少なくとも、様子見ぐらいは出来るのかも知れない
…………少し、探してみるべきか