Eno.87 ロンチー

*ズキューン*

ある日、家のポストだとか、枕元だとか、窓際だとか頭のすぐ横だとか、
とにかくそういう、傍にそれは"着弾"する。
何秒も遅れてずっとずっと遠くから、
火薬の破裂する音……銃の発砲音を、轟かせながら。
もしかしたら、ちょっと窓とか割っちゃったかもしれないけど。

それは小さな筒状のカプセルで、先端は銃弾のように尖っている。
カプセルにはオバケと酒瓶のイラストが入っていて、
その先端を弄ってみれば、簡単に開いて。
中からはなんとも安っぽい紙と、ぐにゃぐにゃになった硬めの紙が数枚。

「頑張って狙いましたが、全然違う人の所に届いていたらごめんなさい。
 貴方に心当たりがなければ、多分ご近所さん宛てです。」

そんな書き出しで始まった安っぽい紙には、
あのシマで見た酒飲み半幽霊からの言葉が綴られていた。
あんななのに字は妙に綺麗で、整っているのが意外かもしれない。

序文に曰く。
「クビになってましたし葬式も挙げられてました」。
本文に曰く。
「でも大隊長にこっそり雇ってもらえましたし、
 なにより前隊長が生きてました!!
 今は3人で出張任務に出ています!27人撃ちましたよ」。
あとがきに曰く。
「出張がてら、そばを通ったのでこの手紙だけ送ります。
 この任務が終わったらしばらく暇になるらしいので、
 また近いうちにお会いしましょう!幽霊船に乗っていきます。
 追伸 お酒があるとうれしいです」。

どうやら、なんだかんだ元気にやっているらしい。
あなたがたは、今から考えなくてはならないだろう。

――あなたたちのいる場所に、幽霊船に乗った半幽霊がやってきた時、
周囲にどう説明したものか、と。




最後に。
「追伸その2 同封した写真は、友達にドッキリする時にお使いください」。

そう添えられたぐにゃぐにゃの硬い紙。写真。
ぴらりとめくってみれば、"本物"が写り込んで笑顔でピースしている、
嫌にリアルな心霊写真……半、心霊写真?だったとさ。

背景にはやけに肌色の多い格好の、凶悪な顔をした女と、
6本腕で愉快そうに笑っている、凶悪な顔をした女も写っていて、
ちょっと半幽霊のインパクトが薄くなっているのが、なんとも……

『らしい』ものだった。