Eno.297 ハイウェイマン

Immortal charm

領主軍に入隊するためのテストを受け、最初の位階も決まった日の夕方。
名字組は下級とは言え貴族なだけあってあいさつ回りがあり、弩兵組のダミアンとジョエルは早速支給された弩をいじっていた。

一人くらい真っ先に先生の所に行くか、と
稽古を見てくれた古参兵の先生の所に行って、こんな話になった。


『お前も遠からず負け戦に出くわすことになるし、死ぬような傷を負う事にもなるだろう。
 そんな時のためにな、不死の呪文を授けよう。』


おおっ、と身を乗り出す。


『自分は死なない、血の最後の一滴が零れようとも生きる、そう言う気概さえあれば
 お前は死にはしない。』


あっという間に眉がハの字になる。


「先生、処置が悪いとかすり傷でも化膿して死ぬって前に言ってませんでしたっけ……?」

『それも勿論事実。いざって時に精神は肉体を凌駕するmind over matter、ってのも今の話で言いたい事の一つだ。だがな。』


『戦の絶えないこの世界の戦士は、世代を経るごとにそれに順応してきているんだと思う。
 わしが軍で見てきた限りで、ではあるが……下の世代になればなるほど、
 これはもう助からないなと思うような傷から復帰するやつが増えてきた。』

「それでも会戦で負けた側って、半数は死ぬって話ですよね。」

『まあ、それはそうだが。』

「……頑張ってそういう気概を持つことにしますよ。」


話半分で聞いていた、あの時。今はその気概を頼りに、元の世界へ。