Eno.298 万雷 千登美

魔術師の帰還

船を降りた後。いつの間にやら、何事もなかったように。子どもは見慣れた家の扉の前へ立っていて。
けれど、過ごした時間が夢でなかったことは。
すぐにしっかりとランドセルの中の使い魔達が教えてくれるのだろう。

おそるおそるインターホンへ指を伸ばして、ただいま、と小さな声で言えば。
慌てた2人分の足音とともに扉は開き。
魔術師子どもは、ぎゅっと魔王ママの腕に抱きしめられた。

「……うわ〜ん! ママ、パパ、トール! 会いたかったのである〜!」