Eno.22 ニコラス・シェリー

無題

僕はあまりヒトというものが好きじゃなかった。
僕がしたいようにするとき、
生まれるのはだいたい冷笑だからだ。

ヒトというのは冷たく、
しゃべればしゃべるほどバカバカしくなる。
他人を見ていてそう思ったし、
自分を見てそう思っていた。


外なら何をしてもいいかなと思って、
シマにきてから、振る舞いたいように振る舞った。

シマのみんなはそれを笑わなかった。
僕にとって、それはとても不思議な事だった。
目のことしかり、言動しかり。


このシマにはルールとか常識がないから、
みんなそれは“僕”の普通のこととして受け入れてくれるのだ。


受け入れてもらえるのは、みんながはじめましてで、
この狭いシマの中で生きたからだろう。

もしみんなが同じ世界に住んでいて、
同じ常識のもとで生きていたら、
こんなに自然体でいさせてくれることはなかったと思う。


こうして、僕が僕のまま、7日も生きられたのは、幸運だった。
しあわせだった。


僕は現実に帰り、いつも通り過ごすことになるだろう。
少し失敗すれば笑われる世界で。


またシマのみんなに会いたい。
その時ばかりは、僕は僕のままでいよう。

折り返した人生の先、
そんな日がまた1日だけでも来るのなら、
そのために生きることができれば、嬉しいと思う。


願わくば、その機会が
7日よりもちょっと長かったらいい。

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“明日、朝日が昇ってもいい。”
いまは少しだけだけそう思う。