Eno.457 保浦栄恵

後日談:こうして保浦栄恵は日常に帰った

ドラゴン島から持ち帰った金銀財宝の鑑定額は途方もない高額だった。
何とネックレスだけで合計約1億7000万円が付き、これの売却(勿論手数料などでかなり額面は下がったが)で家と車のローンの一括返済を達成。
島の思い出と縁が込められた指輪二個と目下価格が上昇中の金貨は手元に残し、残りの財宝売却で得たお金は貯蓄型保険と個人国債と新NISAとVTZ関連に全て費やした。
こうして保浦栄恵はパートタイマーの稼ぎだけで日々を慎ましく暮らすことの出来る生活基盤を築き上げたのだった。

そんなある日、保浦栄恵の家に警察がやってくる。
音信不通だった旦那に横領容疑がかかっているというのだ。
そして保浦栄恵が巨額の財宝を手に入れたことで、事件との関与を疑われていると。

当然保浦栄恵はそんなことは知らないので、関与の証拠が出てくることもない。
不可思議な無人島に飛ばされたことは説明したものの、勿論信じてもらえるはずもなく。
ただ、自宅の防犯カメラの映像やスマホの通信記録などから、保浦栄恵が自宅の中にいながら本当に一週間どこかへ消えていたという証明は成され、警察は彼女を解放した。

結局旦那(と不倫相手の女)が見つかることはなかった。
しかしもはや保浦栄恵には何の関係ないこと。

「最後にサヨナラくらい言っておくべきだったかしら?
でも、あの船はハワイに行くって言ってたし、そしたらVTZのライブに間に合わなかったものネ。

大丈夫。忘れないワヨ」

不可思議な無人島の思い出を指に、今日も保浦栄恵はVTZに熱を上げている。