Eno.210 隠岐村 光緒

言いたかったけど、言えなかったこと

長への報告書を書き終え、顔を上げる。
時を超えて蘇った石版、星の記憶、調査船。
わずかに持ち帰った宝。不思議な石。

「……幻術にかかっていた、とか言われそうだな」

こんな報告をしてもあまりいい顔はされなさそうだ。
ため息をついて、目を閉じる。

瞼の奥にはいくつもの光と闇が通り過ぎて、
まだまだ眠らせてくれそうになかった。







「なあ」

「もしも、もしもだぞ」

「俺が本物の、忍者だったとしたら」

「……どうする?」


「……」


「なんて、な」