Eno.24 メア

この世界は狭くて、それでいて広くて。

「……んー、んんん?
 ふぁれ……?」


ぽゃ、っと眼を開ければ、海の見える海岸。
目を擦って……

「痛った!
 ねっむ!
 てか身体だっる!」


擦った手についたさらさらの砂が目に入る。
痛い。
というか妙に身体がだるい。

「血が足りねぇ……血が足りねぇよぉ……。」


身体をぼすん、と砂に預ける。
言い文句はアレだが、まともな血液を採っていないので当然。
大人しくしてたから、生きた肉……船員さんを襲わなかったし。
……襲わなかったし……?

…………。

……。

「ダメか、ヴィおにーさんの視界奪えないや。」


目を瞑って試してみるけれども、上手くいかない。
"向こう"ではそういえば一度も試してなかったっけ。

「夢だったのかにゃぁ……。」




「夢だと思うのさ?」


うぴゃぁあああびっくりしたあああ!!!


ぼそりと呟いたら真上に白いもふもふが突然、音もなく、気配もなく。

「は、え、何、死神じゃん。
 あたし今回は何もしてないよ?
 てか羊の死神さんおっひさー?
 って羊のってことはここノクチュルヌ?あれ、シルクランドじゃないの?」


「落ち着くのさぁ~。
 ここネヴァダの先なのさよ。
 ついでに不法世界渡航の容疑がかかってるのさよ。
 裁かなきゃいけないのさよ。
 そもそもキミブラックリストだし。」


「……。」


端と端じゃん!!海渡っちゃった感じ……?
それよりも世界渡航……?
あれ、ストロールグリーン……の件はもう撒いたし、……っていうかその件であたしはシルクランドまで国を渡ったんだし。
でもコイツらが世界を渡るのを間違えるわけはなくて、だってそのために網を張り巡らせてるんだから。

「……。」


「……のさ。
 何笑ってるのさ?」


「ん~?
 ちょっとね~。
 無人島での生活がユメじゃなかったんだなー、って思って、物思いにフケる?ってカンジかな~っ?」



「……。」


「にしし。
 何~?突拍子もなさすぎる話で信じらんないってー??」


「んーん、逆なのさよ。」


「ほぇ、逆。」


「ボクにも……うぅん、ボク達にも似たような経験があるのさ。」


「ふぅん、へぇ……?
 でもそれって。」


「……あっ。」


つまり、不法な世界間渡航をしたってコト。……口を滑らせてしまった。

「………ねーねー、見逃してくれなぁ~い?」


「う、ううぅうん……
 ……しょーがないのさ、ねぇ………。」


ボクはこの吸血蝙蝠に弱みを握られている、逆らえない……のさ。

「にししっ、やりぃっ。
 ……ねーねー、そっちはどんな無人島だったのー?」


「えぇっとね……ボクたちの場合はなのさね……――