これからの幸福
幸運の天使が嵐で行方不明になって数週間後、
奇跡的に生還を果たした(しかもお土産まで持っていた)ニュースは、最初こそ大々的に取り上げられたものの、2、3日もすればすぐ世間の興味から離れていった。
なぜなら、行方不明先で天使の翼とヘイローをなくし、彼は天使ではなくなったからだ。
ビッグマウスゴッド事務所は会見を開き、幸運の天使の座は空席とする旨を発表した。
数少なかった信者は悲しんでいたが、
「でも幸運だったから好きだったわけじゃない。
明るく元気でいてくれればいい」
と、新たな門出を祝福する声もSNS上では見られた。
田由沼努はその間、関係各所にひたすら謝罪して回り、ようやく落ち着いた頃に、天使寮から荷物を持って出た。
かくして、天使の友人がちょっとだけ多い、
普通の家族想いで幸運な男は。
ちょっぴり妹にかまいすぎてウザがられたり、
祖父と共に過ごす時間を大切にしながら、
新たな日々を楽しく穏やかに過ごしていくのだった。
あの無人島で友と分け合ったような、
幸運なだけじゃない、素晴らしい人生のために。
やがて、進学しても、そこで出会った運命の人と家族になっても、田んぼと実家を任されても。
彼の部屋にはいつも、ヒトデの形のクッションと、思い出の写真と金貨が飾られていた。
〜余談〜
男は嵐が来る度に、家族にそれはそれは神妙に語ったという……。
〜完〜
奇跡的に生還を果たした(しかもお土産まで持っていた)ニュースは、最初こそ大々的に取り上げられたものの、2、3日もすればすぐ世間の興味から離れていった。
なぜなら、行方不明先で天使の翼とヘイローをなくし、彼は天使ではなくなったからだ。
ビッグマウスゴッド事務所は会見を開き、幸運の天使の座は空席とする旨を発表した。
数少なかった信者は悲しんでいたが、
「でも幸運だったから好きだったわけじゃない。
明るく元気でいてくれればいい」
と、新たな門出を祝福する声もSNS上では見られた。
田由沼努はその間、関係各所にひたすら謝罪して回り、ようやく落ち着いた頃に、天使寮から荷物を持って出た。
「もう行っちゃうの〜。
グッドラックがいなくなると寂しいよ〜」
「怠惰の天使ダルイネル。
別に、今生の別れってわけじゃないから、
大丈夫だぜ!
今まで俺と仲良くしてくれてありがとな。
また72時間惰眠配信にコメントするぜ」
「おれのヘンテコな寝言しかないのに、
奇特な友人だよ君は〜。
……学校に行くんだっけ」
「家の仕事があるから、定時制だけどな!
だけど、大学にも行きたいんだ。農学部!」
「めちゃくちゃ理系じゃん〜。
頑張って勉強しなよ〜」
かくして、天使の友人がちょっとだけ多い、
普通の家族想いで幸運な男は。
ちょっぴり妹にかまいすぎてウザがられたり、
祖父と共に過ごす時間を大切にしながら、
新たな日々を楽しく穏やかに過ごしていくのだった。
「俺は幸福だ!
家族もいれば、健康も仕事も
学べる場所もある。それに何より……」
あの無人島で友と分け合ったような、
幸運なだけじゃない、素晴らしい人生のために。
「これからも頑張りたいと思える、
思い出がある!
ありがとう、皆!」
やがて、進学しても、そこで出会った運命の人と家族になっても、田んぼと実家を任されても。
彼の部屋にはいつも、ヒトデの形のクッションと、思い出の写真と金貨が飾られていた。
〜余談〜
男は嵐が来る度に、家族にそれはそれは神妙に語ったという……。
「たとえばこんな嵐の日……。
どんなに気になったとしてもだ」
「田んぼや川の様子を見に行ってはいけないぜ!!!!!」
〜完〜