Eno.297 ハイウェイマン

0日目 岩陰にて

この島で目を覚まして、最初に人に会う数十分前。


「……人に会うには物騒すぎるな、この格好は。」

顔をしかめながら、自分の身についているものを確かめる。

バイザー付きのケトルヘルム。
割れるには至ってないが、直線状の凹みと刃が這った跡。綺麗に磨いてたんだがなあ。
幸い脱げなくなってはいない。外す。

大きく凹んだスケイルメイル。おそらくメイスによるもの。
肋が何本か折れていても不思議でないほどの打撃のはずだ……が、当の自分の身体はピンピンしている。
ほぼ脱げなくなってる。槍の折れた穂先をテコにして、ひーこら言いながら外す。

外し終えたら、傷んだ防具を岩陰に穴を掘って埋める。
手に持っていても戦利品を漁った賊にしか見えないだろう。
また掘り出してこの島でも戦う、なんて事が起こらなければいいが。



「………あ、折れてるな、こいつ。」

作業を終えてから折れてるのに気付いた。
普通に考えて、無事では済まない何かが起こった後だ。
じゃあ、何で五体満足でこんな所にいる?ここがあの世か?仲間も来てるか?



「……何にせよ、人の気配もあるのにみっともない姿でうろたえてる訳にも行かないか。」

髪を結び直し、身体についてる砂を落として、程なく遭遇しそうな人の気配に備える。